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脳の進化において最も早く発達した部分は脳幹です。脳幹は、生命維持に必要な基本的な機能を司る部分であり、呼吸や心拍数の調節、睡眠のサイクルなど、自動的な生命活動を管理しています。この部分は、最も原始的な生物から見られる脳の構造であり、脊椎動物の進化の初期段階で形成されました。脳幹は、生存に不可欠な反射や本能的な動作を担当しており、すべての脊椎動物に共通する基本的な生命機能を支えています。したがって、脳の進化における最も基本的で古い部分と言えるでしょう。
理化学研究所 脳の進化から引用・参照
理化学研究所は、日本で唯一の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、計算科学、生物学、医科学などに及ぶ広い分野で研究を進めています。
脳の進化
脳は新たな機能を加えながら進化する
生物の進化とともに、脳も進化してきた。そして、脳は、基本構造が変化するのではなく、新しい機能が付け加わるように進化してきた。つまり、ヒトの脳の進化を知ることは、生物の進化を知ることにつながるのだ。高度な情報処理が可能なヒトの脳ができるまでには、どのような進化の道のりを歩んできたのだろうか。
魚類・両生類・爬虫類
魚類、両生類、爬虫類では、脳幹が脳の大部分を占めている。脳幹は反射や、摂食、交尾のような本能的な行動をつかさどる。魚類と両生類では、大脳には、生きていくために必要な本能や感情をつかさどる「大脳辺縁系」しかない。進化的に古い大脳辺縁系は「古皮質」と呼ばれる。
鳥類・哺乳類
鳥類や哺乳類になると、小脳と大脳が大きくなり、特に大脳が発達し「感覚野」「運動野」といった「新皮質」が出現する。
霊長類
霊長類になると、新皮質がさらに発達して大きくなり、「連合野」が出現し、高度な認知や行動ができるようになる。ヒトでは、新皮質が大脳の90%以上をも占める。
三つの脳理論は、アメリカの神経科学者であるポール・マクリーン博士によって提唱された、人間の脳の進化と構造に関する仮説です。この理論は、人間の脳が長い生物進化の歴史の中で、段階的に3つの脳を獲得してきたという考えに基づいています。
理化学研究所 脳の進化から引用・参照ここまで
3つの脳
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- 爬虫類脳(反射脳): 最も古く、脳幹に位置する部分です。爬虫類に共通する脳であり、生存本能に関わる基本的な機能(呼吸、心拍、体温調節など)を司ります。恐怖、怒り、攻撃などの原始的な感情もこの脳で処理されます。
- 哺乳類脳(情動脳): 爬虫類脳を取り巻くように位置し、辺縁系と呼ばれる部分に属します。喜怒哀楽などの快楽感情、記憶、学習、報酬などの機能を司ります。爬虫類脳よりも複雑な行動を可能にし、哺乳類に共通する社会的な行動もこの脳で処理されます。
- 人間脳(理性脳): 脳の最も外側にある部分で、大脳皮質と呼ばれる部分に属します。論理的な思考、言語、計画、創造性などだけではなく、思いやりや共感等の高度な機能を司ります。人間特有の複雑な思考や行動はこの脳で行われます。
※犬猫脳は哺乳類脳とも言われています。ヘビの脳は爬虫類脳とも言われています。
3つの脳の相互作用
マクリーン博士は、3つの脳は独立して存在するのではなく、互いに密接に繋がっており、相互作用しながら働くと考えました。状況に応じて、いずれかの脳が主導的な役割を果たし、人間の行動や思考に影響を与えます。
批判と議論
三つの脳理論は、発表以来多くの支持を得てきた一方で、批判も存在します。主な批判としては、脳の構造と機能に関する科学的な根拠が十分でない、3つの脳を明確に区別することが難しいなどの点が挙げられます。
近年では、脳科学の発展により、マクリーン博士の仮説を部分的に修正したり、より詳細な脳の構造と機能に関するモデルを提唱したりする研究者も増えています。
分かりやすくシンプルにまとめると
無意識(脳幹─爬虫類脳)
感情(大脳辺縁系─哺乳類脳)
思考(大脳新皮質─人間脳)
脳のコントロールの優位度
脳は進化の過程で段階的に発達してきました。この進化の過程で、脳は大きく3つの部分に分けられるようになりました。これらの部分は、新しく発達した順に「大脳新皮質」、「大脳辺縁系」、「脳幹」となります。それぞれの部分は異なる機能を持ち、コントロールのしやすさも変わってきます。
脳は新しくできた順にコントロールしやすく、古いほど直接的なコントロールは困難になっていきます。
思考(大脳新皮質─人間脳)→感情(大脳辺縁系─哺乳類脳)→無意識(脳幹─爬虫類脳)の順になります。
人間の脳は、進化の過程で異なる部分が追加されてきました。これらの部分は、それぞれ異なる機能を持ち、脳のコントロールのしやすさも異なります。
脳は新しい部分から古い部分へと進化し、新しい部分ほど意識的なコントロールが容易で、古い部分ほど自動的な反応や無意識の行動が多くなります。
人間は複雑な思考や計画を意識的に行うことができますが、感情や生命維持のための基本的な機能は、意識的なコントロールからある程度独立しています。脳の最重要事項は生命維持なのでこの機能が簡単に変更できないようになっています。
大脳新皮質(人間脳): この部分は比較的新しく発達した部分で、複雑な思考や計画、意識的な判断などを担っています。我々が意識的にコントロールしやすいのはこの部分です。例えば、何かを考えたり、意思決定をしたりする時に働きます。
大脳辺縁系(哺乳類脳): この部分は感情や記憶に関わり、人間の感情反応や動機づけに重要な役割を果たしています。直接的にコントロールすることは難しく、感情は自然と湧き上がるものですが、意識的な努力によって感情を理解したり管理したりすることは可能です。
脳幹(爬虫類脳): この部分は最も古く、呼吸や心拍など生命維持に必要な基本的な機能を担っています。無意識の領域であり、意識的なコントロールはほぼ不可能です。生存に関わる反応や本能的な行動がここでコントロールされます。
つまり、脳は新しい部分ほど意識的にコントロールしやすく、古い部分ほど自動的な反応や無意識の行動が支配的になります。高度な思考や計画は意識的に行うことができますが、感情や生命維持の機能は意識のコントロールを超えたところで動いているのです。
意識する脳、つまり意識的に思考や判断を行う大脳新皮質は、比較的コントロールしやすい部分です。一方で、無意識の領域、特に脳幹や大脳辺縁系に属する部分は、生命維持機能や感情、本能といった自動的な反応を担当しており、これらは直接的に意識的にコントロールすることが非常に難しいです。
無意識の領域は、私たちの意識が及ばない深いところで活動しており、ここにあるプロセスや反応は、通常、意識的な努力では容易に変更できません。例えば、恐怖やストレスの反応、呼吸や心拍などの基本的な生理機能は、無意識的に制御されています。これらの反応は生存に不可欠であり、そのために高度に自動化され、緊急時に迅速に対応できるようになっています。
そのため、無意識の領域の脳を意識的にコントロールすることは難しいと言えます。しかし、心理療法や瞑想、呼吸法などを通じて、無意識のプロセスにある程度影響を与えたり、自己認識を高めたりすることは可能です。これにより、感情や反応をより快適にコントロールする事が可能となります。